【保育】公約比較-15の争点- 2017衆議院議員総選挙

2017年10月18日 文責:Mielka

衆議院総選挙公約比較-15の争点-シリーズ
今回は【保育】です!

この記事では

①まず、保育に関して争点や問題点となっている事項を挙げてその内容を解説し、その争点が生まれた背景や物議を醸す経緯を説明します。
②次に、その争点や問題点に対する各党の対応政策または関連する政策を書き、その政策を採用した理由や狙いを解説します。これに対して、批判やデメリット、対案などがあればそれを出しその理由も解説していきます。 

問題点

 現在、保育所や学童保育への子供の入所申請がなされ、条件を満たすのに保育所に入ることができない子供たちがたくさんいます。厚生労働省によると2019年4月1日時点で全国の待機児童数は26081人にのぼり、前年比で2528人増えています。これらの子供たちは「待機児童」と呼ばれ、子供たちだけではなく、子供を預けて働きたい親御さんにとっても深刻な問題となっています。
つまり、「入りたいのに保育所足りてねえから入れないし、子供預けられなかったら働けないじゃん」ということです。

▼この問題が注目を浴びる経緯

 2016年、「保育園落ちた日本死ね」と書き込まれたブログが話題を呼んだことを覚えているでしょうか?多くのメディアが報道し、国会でも取り上げられました。勿論これ以前も待機児童問題は議論されてきましたが、このことをきっかけにより周知のものとなりました。

▼この問題の背景

 この問題の背景には様々な事情が複雑に絡みあっています。例えば近年のトレンドとしてダイバーシティが非常に重要視され、女性の社会進出が進んでいます。これ自体はポジティブなことです。しかしこの時、小さな子を持つ女性が働きに出る場合、子供を預けなくてはならないことが多く入所申請は増加します。
 また都市部への人口集中と、地方部の人口減少は一定地域における入所申請増加の遠因であると考えられます。
 さらに近代において進む核家族化は、家庭において子供の面倒を見ることのできる大人を減らし、保育所に頼らざるを得ない状況を作り出しているといえます。おじいちゃんおばあちゃんに頼りたいけどそれが出来ないときもあるでしょう。

各党の政策

▼解決策、関連政策

 待機児童問題の解決には保育制度を拡大し充実させていくことで解決が図られています。また一方で、直接的な解決を図るものではないものの、待機児童問題に多大な影響を及ぼす政策も存在します。これらについて,各党の公約はどのような解決策を提示しているのでしょうか。

▼政策①保育所の増設(自民党、公明党、共産党、日本維新の会)

 まず、待機児童がいるのであれば、単純にその受け皿を増やそうという解決策です。具体的な数字について、公約では自民党は2020年までに32万人分の受け皿を整備することを掲げており、公明党も期限は不明ですが同数の受け皿確保を唱えていす。さらに共産党は30万人分の認可保育所を増設するとします。また具体的な政策内容について、経済政策や規制緩和の手法によって各党は保育所を増設しようと試みています。どちらも保育所を建てやすくしちゃおうということです。
前者については、日本維新の会の地価に応じた地代、家賃の運営費補助や共産党の国庫負担による運営費補助、幸福実現党の事業所内託児施設の設置における優遇などの公約があります。後者については日本維新の会が認可保育所設置基準の地方分権を掲げ、幸福実現党が保育所の設置基準の規制緩和を唱えています。
ただし、設置基準を緩和しても質を担保できるか、財政支援の際の財源は忘れちゃいけない問題です。

●保育所には種類がある!?

 増設する保育所の種類について、まず企業が作る保育所で、企業が従業員の子供を預かるための「企業主導型保育所」を増設しようと進めているのが、自民党や公明党などです。
 企業主導型保育所は国の認可を受けてない認可外保育所ですが、一定の条件下で助成が受けられます。この企業主導型保育所は、働き方に応じた保育が可能で、他企業との共同設置などでリスクを分散することで設置に踏切りやすいなどの長所があげられます。また自治体が関わらないため迅速な設置が可能です。

 これに対し、「事業所内保育所」は企業によるものですが、基準を満たして国の認可を受けた認可保育所です。こちらは幸福実現党が税制優遇を唱えています。もちろん、企業によらない通常の認可保育所も数多くあります。この認可保育所は自治体が関わり、利用や設置をするには制約があるのです。
 ただし企業主導型保育にも批判やデメリットはあります。過去に共産党の議員からは、企業主導型保育は国の認可がおりる基準を満たしていないので「保育の質の低下は避けられない」、「企業に都合のいい柔軟で多様な働き方が保護者に強いられ、子供たちの健やかな成長が犠牲にされてはならない」などの言葉が投げかけられました。共産党は企業主導型保育よりも認可保育所の増設を進めるべきだとし、社民党も企業主導型保育所の増設には反対しています。しかし先ほど述べたように、認可型保育所にも自治体が関わるため迅速な設置ができないなどの欠点があります。

▼政策②保育利用者への財政支援(自民党、希望の党、公明党、共産党、日本維新の会)



 まず、待機児童の解決策ではありませんが、この問題に多大な影響を与える関連政策として自民党、希望の党、公明党、共産党、日本維新の会が保育料無償化について公約で言及しています。
 これに対して幸福実現党が、バラマキ政策だ!教育の質低下を招く!と批判しています。確かに保育料の無償化は子育て世帯の負担軽減にはなりますが、潜在的な需要が表面化し、待機児童を増やす危険性もはらんでいます。
 つまり、「よっしゃ保育料無料だ申請しよう!」→同じような人が実は多数存在している→保育所のキャパオーバーになるかもしれない、ということです。実際に静岡県や大阪府守口市では、そのような事例が存在しています。

 

 また、財政支援策の1つとして、バウチャー制度について公約で言及しているのが日本維新の会、日本のこころ、幸福実現党です。バウチャー制度とは,ここでは保育という使い道を指定されたクーポンのようなものを保護者に配布する支援策です。親がこれを用いてよいと思う保育所を選ぶため、保育業界によりよいサービスを創出しようとする競争原理の発生や新規参入の期待が言われますが、すべての保育所が競争に生き残れるわけではありませんし、先程述べた財政支援による入所希望者増加にも対応していく必要がでてくる可能性があります。

▼政策③保育担い手の待遇改善(共産党、日本維新の会、立憲民主党、社民党、幸福実現党)

 現場の保育士の方がその賃金の安さを訴えるなど、保育の現場環境の改善が求められています。こうした保育士の処遇改善は、保育士にとって必要なだけでなく、担い手の確保、保育の拡充につながり、待機児童問題の解決にも不可欠だとされます。

●保育の現場における3つの格差!

(i)まず、2017年度の予算案では、保育士の賃金月6000円アップが政府により提唱されました。しかしそれでは全産業平均から10万も低い保育の賃金の改善にはならないなどと共産党から批判の声があがっていました。こうした現状もあり、今回の公約では社民党が当面月5万円の賃金増を掲げますが、いかに財源を確保するかが課題となりましょう。
 これが第一の、多くの産業と保育の間に広がる格差です。ただでさえ過酷な保育なのに、他の産業よりも大幅に賃金が低かったら…もう他の仕事をしたいとなってしまいますのも無理はありません。

(ⅱ)次に過去の厚生労働省の調査によると、国の支援を大きく受ける公立の保育所の常勤保育士の給与が,私立の給与を月額で約三万円上回ったとあり、主任保育士はさらに格差が大きいとされています。この格差是正を日本維新の会は主な政策として打ち出しています。

 これが第二の、公立と私立の保育所の保育士間の格差です。

(ⅲ)最後に、雇用という面に関して、保育所には正規職員に加えて非正規雇用の臨時職員も多くいます。正規職員と同等の仕事を求められることが多いにも関わらず、正規職員よりも待遇のよくない臨時職員には不満や確執が生まれ、保育の現場から遠ざかることもしばしばあります。この現状を打開するために、共産党や幸福実現党は非正規保育士の正規雇用化に言及します。

これが第三の、正規と非正規の保育士間の格差です。

これらの格差を解消することは、保育士になろうというきっかけを人々に与え、ひいては待機児童改善につながるのではないでしょうか。しかし、その具体的な方策と財源が求められます。

最後に

以上が保育の、待機児童に焦点を当てた政策解説になります。保育の「質」と「量」を常に考え、その向上には方法と財源を念頭に置き現実的な政策をとるべきであると感じます。

 

参考資料

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000176137.html
https://mainichi.jp/senkyo/articles/20171013/ddm/001/010/118000c
https://www.google.co.jp/amp/www.asahi.com/amp/articles/ASK5H53H0K5HUTPB00J.html
http://toyokeizai.net/articles/amp/116519?display=b&amp_event=read-body
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2016-03-20/2016032002_01_1.html

この記事は全党の公約を参考に執筆しました。公約へのリンクはこちら

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