衆議院総選挙公約比較-15の争点-シリーズ
今回は【原発問題】です!
問題提起
福島第一原発事故から早くも6年が経つにもかかわらず、原発をこれからどう扱っていくべきかについてのコンセンサスが取れていない状況が未だに続いています。
原発は温室効果ガスを排出せず、作り出す電力も大きいため安価で、何より核リサイクルに成功すれば無限エネルギーとなるかもしれないといった利点がある一方で、放射性廃棄物の処理方法や原発の安全性についての疑問は未解決のままです。
私たちは、原発とどのように向き合い、科学技術の進歩とそれがもたらす副作用のバランスをとっていくべきでしょうか?
この問題が注目を浴びる契機
2011年3月11日に日本を激震させる未曾有の出来事が起こりました。
そう。東日本大震災です。
東北地方を中心に沢山の方々が津波や地震による被害を受け、福島第一原発では史上最悪の原発事故が起き、5万人以上の人々が今もなお避難生活を続けています。
『原発は安全である』そんな神話が蔓延っていた日本国内で、福島第一原発事故は大変衝撃的な出来事であり、この日を境として日本はエネルギー政策を見直す必要を迫られました。
この問題の背景
現在日本のエネルギー自給率はOECD加盟国中で2番目に低い約6%しかありません。原発事故を受け火力発電の需要が高まる中、日本は化石燃料を海外からの輸入に頼っており、輸入に頼らなければ自国民の生活を賄えるだけのエネルギー資源がないのです。
(経済産業省ホームページより)
原子力発電事故が起きるまでは、温室効果ガスを排出することなく、少ない燃料で多くの電力を供給できるため原子力発電は火力発電の代替発電とされてきましたが、原発事故に伴って原発を用いる事に対する不安が広がりました。
そこで、事故後は温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーを利用した発電を原子力エネルギーの代替として用いようとする試みもなされていますが、作られる電力量が少なく、自然環境に影響を受けやすいというデメリットもあります。また、日本ではインフラが十分整っていないため,経済産業省の発表によると結局再生可能エネルギーの割合は全体のわずか数パーセントしか占めていない現実があります。
(参考:
http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/renewable/family/index.html )
どの発電方法にもデメリットがあり、安全供給・コスト・環境負荷・安全性において完璧なエネルギー源はないのです。
各党の政策
▼解決策、関連政策
原発政策は再稼働すべきか、新設すべきかという2点が争点となっています。
再稼働すべきかについては、今すでに出来上がっているものに関しては使用するという意見や、廃炉期間までは使用するといった意見がある一方で、即座に廃炉にするとの意見があります。
また、新設すべきかについては、新設して原発の依存度を強めるといった意見や、新設せず再生可能エネルギーを代替として用いるといった意見が上がっています。
▼政策①再稼働を推進すべきかどうか
●再稼働推進・容認(自民党,公明党,希望の党,日本維新の会,日本のこころ,幸福実現党)
公約では自民党は原発を重要なベースロード電源と位置づけ安全性の確保を前提に活用するとし、同じく与党の公明党は住民の了承を得て再稼働を容認しています。野党では希望の党・日本維新の会・日本のこころ・幸福実現党が再稼働を容認するとしています。希望の党は、40年廃炉を徹底し,安全性や確実な住民避難措置の取り決めを前提に再稼働を容認としていますが,「2030年までに原発ゼロ」との指針を打ち出しています。日本維新の会は再稼働のために安全基準や住民避難措置及び損害賠償措置を含めた5つの要件を提示していいます。
●再稼働反対(共産党,立憲民主党,社民党)
共産党,立憲民主党,社民党は再稼働すべきでないとの意見を持っており、共産党は現在再稼働している原発についても即時停止、立憲民主党は現状では再稼働は認められないとしています。
自民党は原発政策を推し進めていきたい意向が感じられますが、公明党は原発に依存しない社会を目指すとしていることから、与党内でも自民党と公明党の間で原発政策に温度差が感じられます。与党内の温度差は、自民党が温暖化対策には原発が不可欠という立場をとっている一方で、公明党は温暖化対策には再生可能エネルギーを用いた発電で対処すべきだという意見の違いから生じていることが考えられます。
自民党は、全電力に占める再生可能エネルギーの比率目標を2030年度に22~24%としています。これに対し、共産党と公明党は2030年度までそれぞれ40%と30%。そして、社民は2050年までに100%との目標を掲げています。希望の党は30%としていますが、いつまでに達成するかは明らかにしていません。
2015年のデータを見てみると、再生可能エネルギーの割合は4.7%となっています。これは、2012年の1.4%に比べると3年間で3倍以上の数値ととなっていますが、まだまだ全体でみると低い割合だといえるでしょう。
これから先、ますます再生可能エネルギーによる発電が本格化していくことが考えられるので、全体を占める割合がもっと高くなることが予想されます。
一方、原発は全体の0.4%しか占めていません。この時期、日本国内で再稼働していた原発は川内原発2号機だけで、原発が全体の0.4%しか占めていないのに電力が足りていることから、日本は原子力発電なしに電力供給が出来るように見えます。
しかし、全体のかなりの割合をしめる化石エネルギーを使った火力発電には化石燃料の輸入が不可欠であり、日本が輸入している地域は危険地域も含まれる中東に偏っていることから、輸入が止まれば日本経済をはじめ様々な部分に多大なる影響を与えることも考えられます。
だからこそ、他のエネルギーに割合を分散させることでもしもの時の打撃をやわらげることが必要だと考えられています。そこで、原発は低価格で安定的に大量の電力を作ることが出来るため、ベースロード電源として用いるべきだとの意見が出てくるのです。また、原発の停止により電気料金が値上がりし、中小企業に大変な負担がかかったことから、日本経済のためにも原発が必要であるとする見解もあります。
(東京ガスホームページより)
(経済産業省ホームページより)
(経済産業省ホームページより)
それに対して、原発はひとたび事故を起こせば、長期間にわたって広い地域に、これまで経験したこともないような大被害を及ぼしかねないものです。安全性については現在の科学技術において立証されておらず、日本学術会議も最近の提言において原発は「未完の技術」で、福島原発では事故処理のために過去の発電による売り上げを上回る資金が費やされると指摘しています。このようなことからも、原発は安全だということのできないものであり、国民の生命・安全を守るために原発は廃止すべきであるとの意見が出てきます。
何より、高放射性廃棄物の再処理施設が青森県六ケ所村に新設しているものの、まだ出来上がっていません。安全性確保の観点からも、国内で放射能廃棄物の処理をできる能力をもっていなければ、放射能による危険を排除することができません。また、日本国内で高放射性廃棄物の処理ができなければ、廃炉にするとしても数十年は核融合が続くので、廃炉まで長い期間がかかり簡単にできません。
さらに、2013年から2015年にかけては2年近く稼動原発ゼロであったため、これは日本が原発なしでやっていけることの証明であるとの主張も共産党がしています。また、他の原発ゼロを掲げつつも再稼働は容認する政党を意識してのことか、原発ゼロを目指すのであれば再稼働は必要ないはずだとし、事故時の住民避難を審査基準にしない原子力規制委員会の新規制基準にも疑義を呈しています。
▼政策②原発を新設すべきかどうか
新設については自民・日本維新の会・日本のこころは今回の公約で明言を避けた形となっていますが、日本維新の会に至っては、次世代原子炉の研究は持続させるとしています。
一方で、新設を認めるとしたのは幸福実現党であり、原発の新設を進めることで次世代原子炉など新技術の研究・開発の促進を謳っています。
また、希望の党・公明党・共産党・立憲民主党・社民党は新設に反対しています。中でも、立憲民主党は原発ゼロ基本法を制定するという方針を打ち出しています。
新設については、明言を避けた政党もありどちらかというと原発政策の争点は再稼働を認めるか否かのほうに重点が置かれていることがわかります。
最後に
以上が原発政策の政策の論点提示となります。2017年の衆院選挙においての原発政策は、再稼働すべきかどうかの方にどちらかというと重点が充てられているように思われます。
現在の世の中には残念ながら完璧なエネルギー源はありません。だからこそ、それぞれのエネルギー源のメリットとデメリットをしっかり理解したうえで原発をどう扱うべきなのかを考える必要があるといえます。原発も良い面と悪い面があるからこそ、賛成派も反対派もどこまで譲歩できるのか、また絶対に守りたい部分はどこなのかを議論の上で示す必要がこれから先はあるのではないでしょうか。
参考資料
経済産業省ホームページ
http://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/energy_policy/energy2014/index.html
資源エネルギー庁ホームページ
http://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/nuclear/001/pdf/001_03_003.pdf
東京ガスホームページ
http://www.tokyo-gas.co.jp/kids/genzai/g4_2.html
しんぶん赤旗・共産党ホームページ
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-10-16/2017101601_05_1.html
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-10-13/2017101305_01_1.html
http://ieei.or.jp/2014/11/opinion141117/
この記事は全党の公約を参考に執筆しました。公約へのリンクはこちら